「あなたの心にすっと届いてくる写真、そういう写真を目指しませんか。」


そんな言葉に誘われて、僕は写真を撮り始めました。

「うまい写真」や「伝えようとする写真」、
作者不在の写真ってそろそろ飽きてきませんか？
それよりも「感じる写真」を撮ってみませんか？

ちゃんと撮れるんです。
「伝えようとしてしまう」のは、ちゃんとあなたが「写真を撮ろう」と思ったから。
あとは、「ここでなぜ写真を撮ろうと思ったか」を説明する前に、
「ここでなぜ心が揺れたか」感じるまま撮れば良いんです。
そうすれば「その感じ」も相手に伝わるでしょう。

「伝えよう」としてはダメなんです。
伝えようとすればするほど「必死の姿勢」が伝わってきてしまう。
写真は伝わる事を信じて、自分の感じたように感じたままを撮る。
そうすれば「伝わって」しまうものです。

写真なんて何をどう撮ったって自由なんだから、もっと自由になったら良いと思う。
そう思うのに、みんな自分で「こうすべき」や「写真はこういうもの」なんてルールを用いて、
だから、「こうあるべきの写真」ができあがる。
「うまさ」は簡単に評価しやすいしされやすい。理解や共感も得られやすい。
見慣れている写真だからこそ安心するし、評価もできるし「うまい」って賞賛もされる。
しかし、それらは鑑賞者の「美意識」を借用しただけに過ぎない。

でも、写真って、それだけじゃない。

その写真を見る事で、あたかもそこにいてその光景を見ているような、
作者のまなざしを追体験する事で、作者の気分を共有する事ができる、
そういう写真。

鑑賞者側からいえば、
写真を見るだけで、撮ったひとと面識もないのに、
その人がどんな感じの人か想像できてしまうような写真。

撮影者側からいえば、
被写体が人物だろうが風景だろうが、
その被写体の向こう側に写っているのは自分自身、
つまり作者自身のセルフポートレイト。

”誰の為に撮っているのか”
この比率が、とても重要だと思うんです。

いちばん異なるのは、向こう側にあるか、こちら側にあるか。


留めたいのは、「その光景」を前にした自分の心情であり、
それを理解して欲しいんじゃなくって、「感じて」欲しいんだ。

見せたいのは、写真に撮ったその被写体じゃなくって、
その被写体を前にした自分やそのときの自分の想いなんじゃないだろうか。

写真は、
撮りたいものを、撮りたいとき、撮りたいように撮ればいい。
人や光景と出会って、見た感じそのまま撮ればいい。

自分の「ほんとう」がどっちにあるのか、すっかり自分で気づいているんだから、
自分がほんとうに撮りたい、残したいものを見せてくれたら、
僕は、あなたの事、
もう少し分かるような気がするんです。
僕はもっとたくさん「感じる写真」が見たいんです。もっとあなたを知りたいんです。


終わりに、
僕がこんな風に写真論を並べてみるのは、すべて写真家 伊東和則氏の影響なんです。
伊東さんのワークショップに参加した事をきっかけに、
僕がいまもこうやって写真を撮り続けている事で、人生が豊かなものであるように、
あなたにもそう写真を愛して欲しいんです。



佐藤正明

HOME>>ワークショップ>>PAGE TOP